雅楽協議会さんの「雅楽だより」に掲載された文章
最新号に掲載されています。
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Project Etenraku・「平調の越殿楽」を奏でて絆を、希望を
伊藤えり
震災を機に「毎日夜六時から、祈りを込めて平調の越殿楽二行を演奏しましょう。それぞれがいる場所から・・・」という呼びかけをブログやメールを通して始めました。三月十七日からスタート、すでに五ヶ月が過ぎました(八月末現在)。少しずつながら賛同の輪が広がっています。
私事ながら、今年の五月に、長年住み慣れた東京を離れ、奈良に越してまいりました。「雅楽のふるさと」のような奈良・東大寺、春日大社、薬師寺、唐招提寺のすぐそばです。このような地で、祈りと希望のProjectを続けさせていただくことで、改めて雅楽という芸能が、いかにたくさんの人の熱い想いによって外国からもたらされ神仏の前で演じられてきたか、そして長い年月を生き延びてきたか、ということに想いを馳せています。
雅楽協議会様から再び原稿掲載のお声がけをいただき、また、「敢えて盤渉調の越殿楽ではなく、平調の越殿楽を」と書いた前回のわたしの文章にご質問もいただいたとのことで、ご質問にお答えしながら、今後の展望について書いてみたいと思います。
通常、雅楽の世界では、ご供養やご葬儀に際して付楽、献楽を行う場合、仏教、神道を問わず、盤渉調から曲が選ばれます。そのような意味合いから、震災直後に開始したProject Etenrakuでの奏楽の呼びかけで、「平調」を選んだことを不思議に思われたかたもいらしたようです。「平調」の越殿楽は、婚礼の式典で奏されることも多いため、「おめでたい曲」というイメージもあるようですが、これは近年に作られたイメージです。
また、わたしがProjectを通して始めたかったことは、災害で亡くなられた方々への「追悼」ではなく(正確には、「追悼の祈り」も込めつつ)、「希望と未来を導くこと」でした。
Project Etenrakuには、越殿楽を同じ時間に奏することで、離れていても「ひとりではない、無力ではない」と感じられるようになること、辛いときにも楽器を奏で、集中することで、無用な不安感を追い払えること、日本の「今」を生きていることをしっかりと感じること、過去の困難な歴史を乗り越えてきた先人たちの歩みの「確かさ」を思い出すこと、そしてそれを今の世から後世へと伝えていくことの「重み」を感じること、などなどを期待して、続けています。小さなことながら、特に三月四月中は、不安を払拭するのに効果が大きかったようです。
今後、新たにProjectを展開していくことも考えています。定期的に(毎月、十一日前後などに)合奏やご奉納のための奏楽、献楽などを行っていくことなども検討中です。とてもありがたいことに、わたし自身が予想していた以上に多くのかたが見守っていてくださるようですので、ご協力を仰ぎながら、日本各地で合奏会などを行ったり、被災地に生演奏をお届けに伺ったり、またその様子をyoutubeに載せたりすることで、お互いにエールを送り合えるのでは・・・と夢を膨らませています。
奈良時代にも平安時代にも大きな天災が日本を襲っていますが、当時はインターネットも原発もありませんでした。平成の世を襲った今回の震災と原発の事故は、平成の人間にしかできないやり方で乗り切っていくしかありません。ネットなどを通じて、日本全国の雅楽愛好家に呼びかけを行いながら、絆を作っていきたいと思っています。
プロジェクト詳細は、
https://sho3ku.cocolog-nifty.com/blog/projectetenraku.html
youtube内のprojcet etenraku専用チャンネルは、
http://www.youtube.com/watch?v=v5TsT5bZHJ8
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