行って参りました。
奈良・大安寺でのベトナム宮廷雅楽団のご奉納演奏。
大安寺は、仏教導入期に大きな役割を果たしていた、国際的な大寺のひとつだったようです。雅楽の歴史に詳しいかたならご存知の仏哲(ベトナム僧)、菩提僊那(インド僧)が逗留していたのですから、今でいえば、大使館や領事館のような役割も果たしていたのでしょう。
奈良朝の国際性を考えると、頭がくらくらします。
そして、当時の雅楽の国際性も。
平安京に都を遷してから、国風文化が開花、以後は外国とのやり取りがほとんどなくなり、考えてみたら江戸の鎖国の時代を経て明治時代に突入するまで、日本は海外との交流がほとんど、なかったんですね。
もちろん、貿易などの点ではほそぼそと交流は続いていたものの。
奈良時代のようにたくさんの外国人が日本に居住していた時代は、平安時代以降は、なかったと思います。
さて、大安寺です。
以前から伺いたいと思っていましたが、どの駅からも離れた、やや不便な場所にあるようで、遠いように感じていましたが。。。
調べてみたら、家から自転車でほぼ、直線で行けるではありませんか!
田んぼ道を自転車で飛ばし、さて着きました。
本当に小さいお寺で、逆に驚いてしまいました。
かつて、宗教の場というだけでなく、大使館・領事館、そして大学のような機能も兼ねた大寺は、何度もの火災などで焼け落ちで、縮小されていったようです。
それでも、広がる田畑のなかにある、ほっこりとしたお寺で、おそらく地元のかたがたの信仰も厚いのでは、と思います。
さて、雅楽団ですが。
屋外でのご奉納なら写真も撮れるかも、と思っていましたが、ご本堂でのご奉納で、写真は禁止。華やかな衣装などをお見せできないのが残念です。
こちらに記事が。
http://www.47news.jp/CN/201309/CN2013090501001258.html
小さな写真しかないのが残念ですが、雅楽というよりは、やはり「伎楽」に近い感じでした。
京劇のような雰囲気の衣装もあれば、バリ島の舞踊のような振りもあって、アジアの民族芸能が様々にミックスされている感じ。
古式というよりは、やはり近代的に変容している雰囲気。
音楽的にも、日本の雅楽との共通点はほとんどないように思いました。
むしろ以前東京で観た、チベット仏教の僧侶の歌舞に似ているように思います。
でも、上記の記事にある写真の舞は、出て来たときに(あっ、獅子だ! 四天王寺に残されている獅子と似ているのかも!)と思ったのですが(古い記述には、「獅子」は法会ではかなり、あちらこちらの寺院で演じられていた様子)。。。
獅子舞の獅子のような、大きな口と誇張された目。
(しっぽのデザインが、またまた、キテレツ!)
ですが、この演目は、「獅子」ではなくて、なんと「麒麟(きりん)」だそう
この演目も、「オチ」があって、笑いを誘うものでした。
どの演目もおおらかで、笑いを誘う要素があります。
最後は蓮の花をかたどった灯籠を持った舞人さんたちが、「組み体操」のようにして高く組み上がり、仏様にお祈りを捧げているようでした。
でも、昔の仏教はこのような感じでおおらかだったのでは、と思います。
「笑い」とか「心を楽しませること」が、真の「平和」や心の安寧に繋がることを昔の人はよくご存知だったのでは。東大寺の開眼供養の際に行われた伎楽の記録、そして残された面などを見ると、おどけたパントマイム風の演目を大仏様にご奉納していた当時の仏教の感覚が、とても楽しいものだったように思えるのです。
お能には「狂言」という笑いの世界が対にになっていますが、雅楽は「伎楽」や伎楽めいたものを歴史の過程で失っています(唯一、「安摩二の舞」や「胡徳楽」などが伎楽の香りを残す?)。
そういったものが今、残っていたら、、、と思います。
日本の雅楽は、使う楽器を減らしたり、日本風にアレンジを繰り返すなどしながら洗練を極めるのですが、逆に伎楽的要素はアジア圏全体に残されているのでは。
日本では、地方のお神楽などに伎楽は吸収されていったのかもしれません。
それでも(あの衣装は、○○に似ている)とか、(日本はどうして、舞台上で「詠」を唱えることがなくなってしまったんだろう)など、いろいろに想いをめぐらせながら、団員のかたがたのご奉納を拝見させていただきました。
韓国の宮廷舞踊でも、「詠」は残っていますし、日本でも記録上は行われていたことが残っています。日本の雅楽は、高度に発達したものが脈々と伝わっているのですが、やはり失われているものも、たくさんあります。
その小さな「片鱗」がやはりアジアの諸伝統芸能のなかに、きらりと輝くことがあるのです。
日本の現行の雅楽とはだいぶ違う雰囲気ですが、そういった片鱗に出会うと、どきりとしますね。
一行は、あさって、横浜能楽堂で公演されます。
日本からは南都楽所、そして伶楽舎のメンバー数名とベトナムの方々の合奏による芝祐靖先生の新作「仏哲に捧げる」を演奏されるそうです。
こちらも本当に拝見したかったのですが、、、、
残念です。
先々、現地ベトナムで、宮廷雅楽、もう一度拝見できたらいいなあ、、、と思いました。
将来、昔のシルクロードや雅楽にゆかりのある海外を回る機会があったら、と思っています。そんなところで演奏もできたら、、、お里帰りならぬ、先祖帰り?かもしれません