太皷のこと2
太皷といえば。。。
そういえば、雅楽界には若いころから明治選定譜を完全に暗譜していて、いつでもほぼ完璧に吹ける、Tさんというかたがいらっしゃいます。
持ち管は篳篥の人、ですが、全管(そして絃も!)、「完全に」暗譜されています。
わたしがまだ学生の時分に、多忠麿先生の合奏の研究会のときでしたか、Tさんが太皷を打ったときに、「図(ずん)、百(どう)」の二発、打っただけで、その場にいた全員が、はっとなったのです。
あきらかに、音が違ったのです。
どしっと、お腹に来るような音でした。
忠麿先生が、「君は、ぼくより耳がいいね」とおっしゃっていた人です。
篳篥の大名人の東儀博先生のお弟子さんでしたが、博先生も、「あいつは本当に耳がいい。一度、俺が吹いた音を五線に直してもらったんだけど。。。俺が吹いた覚えのない音も、譜面にしてくるんだ。『俺はそんな風に吹いていない』といったら、『いえ、確かに先生はそのように吹いていらっしゃいました』だと。俺が意識していない音まで譜に採るんだから。まいっちゃうような、まったく」(博先生はちゃきちゃきの江戸弁で勢いよくお話になる先生でしたので、その口調で)、とおっしゃっていました。
Tさんは、太皷だけでなく、鞨鼓も見事です。
陵王一具のときも、本当に一具全体のテンポの配分、バランスとか、音量とか、タイミングとか、Tさんでなければできないような名演でした。
太皷は、乱声のときの打つタイミングなど、最近は譜面が出たこともあって、その通り、バカ正直に打つ人もいますが、本当はもっと「ストライクゾーン」が広いものだと思います。
(もちろん、それはダメ!というところもありますよ!)
許容範囲が広いなかで、いろいろと工夫できるのが、雅楽のおもしろさでもあるので。。。
うわあ、すごいなあ、と思える太皷に、また出会いたいですし、自分も、おもしろさのある太皷を打ちたいと思います。
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