国立劇場 散吟打毬楽 (1)
散吟打毬楽は、実は国立劇場では2回目の公演です。
(そのことにパンフレットではまったく触れられていないので、やや不思議に思っていましたが・・・)。ウソでした、表紙裏の文章に「数回復曲が試みられているが」とありました・・・謹んで訂正させていただきます・・・
国立劇場のデジタルライブラリーで調べてみましたら、1988年の9月30日公演。。。
今から22年前、ですか。。。
伊藤はこのとき笙で参加しています。
ただ、内容をほとんど覚えていなかったので、詳細をチェックしてみましたら、大劇場での公演、舞も入っていて、振鉾一節二節があり、声明は舞台側と客席側に分かれ、楽人も左方と右方に分かれていてそれぞれ三管通り、非常に大規模な編成でした(だんだん、思い出してきました、このころの雅楽・声明公演!
大体、声明のお坊様方が舞台と客席側に分かれて、声明を唱えられることが多かったです)。
まったくあいまいな記憶で、やや無責任ではありますが、このときは今回のように古い譜から復元を行うという形ではなく、三十二相の声明に対し、「付け楽」のような形で(お互いに、声明と雅楽は関係なく)、既存の古典曲を吹いたように記憶しています。
今回は芝祐靖先生の詳細なご研究による復元で、古譜の笛譜から曲を起こされていったようですが、まったく古典の語法にのっとっている、と感じました。齟齬間、のようなものがまったくなく・・・
芝先生の復曲は、ときどき、意図されて斬新な響きを求められることもありますが、今回は三管と整合性とか、絃の入り方とか、「古典曲です」と言われても、違和感がないような曲でした(・・・もっとも、明治選定譜にも、摩訶不思議な曲は数曲、入っていますが・・・)。
声明の側では近藤静乃さんの詳細かつ丹念なご研究に則り、全体の構成が作られたようです。
今回は、「付け楽」のような形ではなく、双方が「音楽」として「合う」ように作られていて、
芝先生が復元を終えられてから、双方の音律がきれいに聴こえるように、全体を整えられた・・・とパンフレット解説にはありました。
これは、とても大変なお仕事がだったのでは、、、と拝察いたします。
1部の管絃のみの演奏が始まって、まず、感激したのは、笙が・・・本当にきれいでした。
ここ数年来、いろいろな舞台を聴いていますが、そのなかでも「ダントツ」に印象深い笙の音色と演奏、でした。
澄み渡った、バランスのよい涼やかな音色、ゆったりした手移り、まったく息を張りすぎず、平坦にならず、優雅に移り変わる合竹。
大・大・大ベテランの岩波滋先生にも、もっともっと舞台に立っていただきたい・・・と感じました。
そこで、今の楽部のシステムについて、ちょっと思ったのですが・・・それは、また続きのブログ記事にて。
全体のバランスも非常に安定していて、「ベテラン勢の余裕」が感じられました。
雅楽の演奏の相互間のつながりは、「非常に有機的」なものです。
織物のようで、一本、糸が抜けると、ぜんたいが ほつれてしまうことも、ままあります。
レンガを積み上げ、かっちりとつくっていくような洋楽の構成とは、まったく異なる音楽です。
力量がある奏者の集まりですと、お互いがもたれかからず、気持ちよく、依存(関連)しながら、合奏が進んでいくものです。
今回の演奏には、そういうった気持ちよさが溢れていました。
管だけでなく、絃も、打ち物も。。。
長年、雅楽に関わってきて、「最高の合奏、演奏」というのは、「うわあああ、す、すごい!」という類のものではない(笑)、と思います。
「なんてことはない、なんの違和感もない」と感じられる演奏こそが、実は最高にすごい演奏です。
ただ、「滞りなく、自然に、ここちよく」終われる、というのが本当は大変なことなのです。
おもねることも、誇ることも、一生懸命になることも、まったくなく・・・・「自然さ」に委ねられている楽、それが「雅びな楽」かと思います。
復元の妙、構成の妙、演奏者の経験と力量の奥深さ・・・いろいろと感じました。
(2部その他の感想は・・・続く)
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