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2009年5月19日 (火)

高橋全さんのピアノ

今回の、この奇跡的な出会いが重なったCDができるきっかけは、どこにあったのだろう?と考えています。

なかでも2年前の夏の、高橋さんとの出会いは、本当に大きかったです。

とてもショックを受けました。
最初、スタジオでお会いしたときから、きれいな音色できれいな和音を使う人、と思いました。

数日後、朝崎郁恵さんという島唄の名手のかたとのコラボレーションのCDを購入して、聴いてみました。

わずか数秒間で、涙が止まらなくなりました。

これは、なんだろう・・・
その直後、わたしは手術を受けたのですが、
病院のベッドの上で、くりかえしくりかえし、そのCDを聴き続け、回復を待ちました。

そして退院後、世界が変わり始めました。

何か笙で、ピアノに音を合わせてみたい。
自分からそう思ったのは生まれて初めてのことでした。
古典の和音以外の音を、自分で吹いてみたのは。

世界の色が、空気がどんどん変わりはじめました。

わたしは、ずっと・・・時間の止まった世界にいました。
ある一点、ある一時期から音楽から逃げてしまい、ずっと逃げたままでした。何十年も。

回線が切れたような状態でした。


なのに、音楽が戻ってきてくれたのです。

わたしは逃げて逃げて、人生から音を失いかけていたのに、感覚がもう一度、変わり始めたのです。

信じられない思いでした。

子供の頃のことをたくさん、思い出しました。
音に対する接し方が変わりました。体中で反応していくようになり、どこかでセーブしていた垣根がなくなったようでした。

聴覚がはっきり変わり、視覚も行動もまったく変わってきました。

感情の起伏が激しくなりました。
感情を表すのがとても苦手だったのですが。
妙に、おしゃべりになりました。

どうしちゃったんだろう、一体、わたしは、どうしちゃったんだろう?

わたしはずっと呆けたままだったのに・・・急にこれまでとは違ったことばかりをやり始め、止まらなくなりました。控えめに、エネルギーを使いつつ生きていたのが、突然、貪欲になりはじめました(笑)。

手術の成果もあったのでしょうが、疲れやすかった体が、疲れなくなり、無理もきくようになりました。重たいパソコンや何管もの笙を抱えては、広いスペースを借りて、録音をためし、音色や響き具合を試しました。

音楽をもう一度、信頼し、ゆだねてみることにした途端に、世界が、微笑んでくれたのです。

すべては高橋さんのピアノから、でした。


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