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2017年12月19日 (火)

今日は多忠麿先生のご命日で

12月19日は、わたしが20代の約10年近くをお世話になった多忠麿先生のご命日です。

平成6年のことでしたから、約23年前。
自分の人生で最も影響を受けた先生です。
不思議なことにその日は、柏市の自宅に初めて雅楽の仲間を呼んで合奏会と忘年会を行いました。課題曲は盤渉調の青海波。
以来、盤渉調の青海波には独特の想いがつきまとうようになりました。
今の宮内庁式部職楽部の前身として、雅楽には三方楽所というものがありました。
京都方、大阪・四天王寺方、奈良・南都(春日)方。
多家は京都方楽家です。
唱歌に何通りか歌い方があることを知ったのは、忠麿先生のお稽古で、でした。
三方楽所というものがあって、ここは春日方では、こう。。。というものを教えてくださったことがあったのですが、メモが残っているのは、わずか2ヶ所ほど。
春日方の歌い方というのは、東京では、もう消滅してしまったのではないでしょうか。

楽部の先生方は、「楽生」の時分に「楽部」で(楽家のかたは、それぞれのお家での指導があるかと思いますが)二人の指導教官について自分の専門の管を習われるそうです。
多忠麿先生の跡を継がれた多忠輝先生は、忠麿先生、そして薗広晴先生のご指導を受けられたとのこと。そして唱歌や手移りは、広晴先生の流儀を継がれました。
一番大きな違いは、下無の音へ移る際の音の「すりあげ」をするかしないか、です。

「喜瑞」というCDがあります。
龍笛が芝祐靖先生、篳篥が東儀兼彦先生、笙が豊英秋先生。
このCDにわずかに豊先生の唱歌が入っていますが、「すりあげ」をしない歌い方で、多忠麿先生の歌い方と一緒、でした。
豊家と多家はつながりはありませんが、ともに笙を専門とする、京都方の楽家。
同じような歌い方で、納得がいきました。
ちなみに、薗家は大阪方の楽家です。

楽部でも、おそらく明治の世からすでに150年以上も経っているので、唱歌やら奏法やらを統一されたいのだと思います。
少しずつそういう動きで流れているようですが、それぞれが伝承し、守ってこられたものですから、難しいようです。

また、もともとが三流派だったものなら、その三つの流れを残していってほしい、とも思います。
どちらが「正しい」、というものでもないのですし。

今、楽部で多忠麿先生の歌い方、手移りの仕方を伝承されているかたはいらっしゃるのでしょうか。。。
わたしが覚えているのは岩波滋先生、若井聡先生。
継承される先生はいらっしゃるのでしょうか。

毎年、整理に手をつけねば、、、と思っているのですが、多忠麿先生のお稽古の録音、当時の東京楽所のリハーサルの録音。
たくさん残っています。
カセットテープなので劣化が進む一方です。
今年こと、少しずつでもデジタル化するなり、メモとして残すなり、していきたいと思います。

ただ、人から人へと伝えていくのが伝承なら、このまま「春の世の夢のごとく」消えていくのもまた定め、とも思います。

たいていの人は、「法律文書のように1音たりともゆるがさないのが、伝承」と思っていらっしゃるようですが、「わずかなゆらぎ」(個人個人による誤差)があるからこそ、伝承が生き生きとしたものとして伝えられていくのでは、と30年以上雅楽に携わってきて、感じています。

30年以上前の録音や録画を見聞きすると、今、違和感を感じることもあり、逆に今の雅楽のなかに多少の違和感を感じることもあります。
雅楽も時代によって、大きな変動があったと思います。ただ、録音も録画もなかったので、「今」演奏されている音や舞が「伝承」ということになります。
多忠麿先生があるとき「君たちでダビングを録りなさい」とカセットテープをわたしてくださいました。「僕が30代の後半に録音したものだよ。今(当時50代の後半でいらっしゃいました)とぜんぜん、変わらないでしょ?」と自慢げにおっしゃっていました(笑)。

ご自分の全唱歌の録音でした。伊勢神宮にご奉納されたとおっしゃっていました。
ただ、この録音も、わたしたち最晩年の生徒が習ったものと、わずかに音程が違う個所がある曲が何曲か、ありました。

芝先生もやはり時々で音程が変わることがあるようです。

意図して変えられた部分と、意識しないうちに変わってきている部分とがあると思います。このあたりはもう本当に許容される「差」であって、「誤差」でさえ、ないのでしょう。次世代でまたどう変わっていくのか。


「そんなことを書いている暇があったら、勉強しなさい、勉強!」と忠麿先生の声がどこかからリアルに響いてくるような、、、?と、不肖の弟子は感じつつも(笑)、23年後の今日という日を奈良で、過ごしています。。。


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