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2009年5月22日 (金)

梁塵秘抄口伝集貫三十

ひとよりかつべき、かつべき、かつべきとおもいて、吹・唱は愚人の心入りなり。

人を立て、われも立て、仁義禮智信の心、文学の道のごとし。

琴びわにても皆同じ、調子は心息にそくするゆえ、ただちにあらわれぬるぞ、心得べき大極意なり。

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後白河法皇は、12世紀の時の最高権力者。
ところが大の今様(当時の民間での流行歌)狂い。
当時最高の歌い手だった、乙前という河原で生活する貧しいおばあちゃんを宮廷に召し寄せ、なんと弟子入りまでしてしまう。

今の世で例えれば、王族に生まれたにも関わらず、クラシック音楽などには関心がなく、ロックやポップスに明け暮れ、日々エレキギターやドラムに没頭する王子さま、といったところだろうか。

とは言っても雅楽に関しても短いながらに言及があり、しかも内容は深い。
「ミュージシャン」でなければ書けない内容だと思う。楽器にも精通していたらしい。

最高権力者とはいえ、いつ政治が転覆して、自分だけでなく、愛する家族や親友、側近が皆殺しになってもおかしくない世のこと。
そんななかで尋常ではない今様熱は、酔狂を超えて、神がかったものさえ感じられる。

のらりくらりと現実逃避のために音楽に没頭しているのではない。音のなかに神を見、聴き、全霊を捧げて生きてこられた、すごい人だ。

さらに、「音の前には人は平等」というようなこともさらりと言ってのける。
かっこよすぎるのであるが、笑えるようなエピソードも残されていて、人間らしさも感じさせる。

複雑で魅力的、カリスマ的な人だったようだ。
のらりくらりとしているようで、実は奇怪な政治力があったようで、源頼朝も手が出せなかった。

梁塵秘抄口伝集を読んでいると、「生粋のミュージシャン魂」を持った後白河法皇の、熱い想いが歴史を超えて伝わってくる。

900年の時差などなんのその♪ 

後白河法皇の想いは、まるでついこの間まで世にいらした人の想いのように熱く伝わり、その言動には、動かされる。


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